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中島裕之選手がメジャーリーグで活躍するために


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今ライオンズの中で、最もメジャーリーグに近い選手を挙げるとすれば、それは中島裕之選手だろう。マスコミの間では時にメジャー挑戦が規定路線であるかのように語られることが多いが、中島選手自身はどのように考えているのだろうか。現行では早ければ2012年オフに海外移籍が可能となるFA権を取得する見込みだ(国内FA権は早ければ2011年オフ)。松坂大輔投手がレッドソックスに移籍した際は、ライオンズはポスティングシステムを利用した。つまり松坂投手がFA権を取得してから、球団に対しなんのメリットもなく移籍されてしまうよりは、FA権を取得する前に入札制を用いて移籍先を決めたということだ。これによりライオンズは、60億円とも言われる移籍金、いわゆる「松坂マネー」を得ることになった。

松坂マネーにより西武ドームを大幅改修し、ファンクラブのサービスも充実させ、ファン拡大に成功したライオンズだ。中島選手に対してもポスティングを利用する可能性はあるだろう。つまり、早ければ2011年オフにも中島選手のメジャー移籍の可能性があるということだ。だが現状を考えると、中島選手にポスティングを用いるかどうかには疑問が生まれる。なぜなら松坂投手ほどの移籍金が期待できないためだ。

メジャーリーグでは日本人投手の需要は高いが、打者となると投手ほどではない。イチロー選手や松井秀喜選手のように、長年に渡り活躍する打者の方が特異なほどだ。これまでも海を渡ったバットマンは多かったが、松井稼頭央選手、井口選手(現ロッテ)、田口選手(現オリックス)、福留選手、新庄選手などを始め、安定した成績を残し続けているバッターはほとんど見当たらない。そのような現状もあり、メジャーリーグにとって日本人打者は必ずしも欲しいと思われるようなコンテンツではないのだ。つまり大きな移籍金が得られないと判断されれば、ライオンズはポスティングによって中島選手を放出することはしないだろう。FA権を取得するギリギリまでライオンズで活躍し、チームの勝利に貢献してくれることを望むはずだ。

では、もし中島選手がメジャーに移籍したら、果たして打者として通用するだろうか?結論から言えば、筆者は通用しないと思う。だがそれはあくまでも、今現在の中島選手のプレーを見ての上だ。中島選手が今後、メジャー水準にアジャストしたプレーを見せるようになれば、活躍できる可能性は低くはない。

今回はバッティングを見ていくことにしよう。中島選手のバッティングの特徴と言えば、何と言ってもフライング・エルボーというスタイルだ。バットを上段に構え、右肘を高い位置に置いた構えだ。このような構えは上体の強いアメリカ人、中でも中南米の選手が多く採用している。この構え方のメリットは、最大限のバットパワーをボールにぶつけられることだ。だが上半身の筋力が弱ければそれもできない。中島選手は日本人投手を相手にした時はパワーヒッターになることもできる。しかしパワーピッチャーの多いメジャー投手を相手にすれば、中島選手は非力な部類に入るだろう。

フライング・エルボーに加え、中島選手は投球に対し比較的長い時間を掛けてタイミングを取る。フライング・エルボーとこの長いタイミングの取り方のままでは、中島選手がメジャーで通用することはまず有り得ないと言い切ることができる。なぜなら、メジャーの投手の平均球速は、日本人よりも少なくとも5km以上速いとされる。150kmというボールを投げる投手は、メジャーにはいくらでも存在しているのだ。しかも日本人が投げるようなバックスピンをかけた快速球ではなく、上体の筋力で投げ込んでくる非常に重いボールばかりで、しかもそれを手元で動かしてくる。もし中島選手が今のスタイルのままメジャーの打席に立ったなら、恐らくほとんどのボールにバットを押し戻されてしまうだろう。

ではどうすればいいのか?フライング・エルボーを今さら変えるのは難しいし、その必要はないと思う。なぜならそれが中島選手の個性だからだ。だがタイミングの取り方に関しては、メジャーに移籍をする場合は変えるべきだろう。バットスウィングをもっと速くし、短いスパンでタイミングを取れるようにバッティング・モーションをマイナーチェンジする必要がある。分かりやすく言うと、今は「1、2~の~、3」で振っているとすれば、メジャーでは「1、2、3」でコンタクトしていく必要がある。なぜなら、そうしなければメジャーの球速には振り遅れてしまうためだ。イチロー選手がマリナーズに移籍して打撃フォームが若干変わったのも、この対策を打ってのことだった。

さて、筆者は中島選手に関して言えば1つだけ確かにメジャーで通用するものがあると見ている。それは右方向への打球の飛距離だ。中島選手は右方向にもホームランを打てる能力を持っているわけだが、なぜだか中島選手はこの能力を伸ばそうとしていないように見える。もちろん筆者の観察が足りないということを前提で読み進めていただきたいのだが、筆者が試合前に中島選手の打撃練習を見ていると、いつももったいないなぁと思ってしまう。それは特に、ティーバッティングをしている時に強く思う。

右打者の中島選手の場合、通常ティーは左腰の前に上げて(もしくは置いて)打つことになる。なぜならそのポイントが、もっとも楽に打球を遠くまで飛ばせるからだ。だが中島選手の魅力は右方向への打球にある。左腰の前に上げるティーバッティングでは、その魅力を伸ばすことはできない。なぜなら左腰のラインに上げたら、打球はセンターから左にしか飛ばないからだ。では魅力を伸ばすためにはどうすれば良いのか?それは、右腰の前にティーアップしてもらうことだ。

野球経験のある方ならお分かりいただけると思うが、右打者が右腰の前にあるボールを打つことは非常に難しい。バットのスウィートスポットに当てるだけでも難しいし、ましてやそのボールを飛ばすとなるとさらに難しい。なかなかボールが飛んでいかないため、練習していてもまったく面白くはないだろう。それでもティーバッティングならまだましだ。これがフリーバッティングともなれば、右腰の前で打ったボールがバッティングゲージの外に飛んでいくことはほとんどないだろう。恐らく中島選手と言えど、右腰の前のボールを前へ飛ばせるようになるには、最短でも2~3ヵ月は掛かるものと思う。だがもし中島選手がこの特訓を今から始めれば、来季はさらにホームラン数は伸びるはずだし、メジャーの球速にも十分対応できるだけの力を身に付けられるだろう。

実は右腰の前で打つというのは、現在は千葉ロッテで打撃コーチをされている金森栄治コーチの指導法なのだ。金森コーチがまだ西武のコーチだった2001~2002年、和田一浩選手やアレックス・カブレラ選手にこの練習をさせていた。そしてホークスのスコアラーに転身した2003年には井口選手や城島選手にこの練習をさせ、それぞれの打者を一流へと引き上げていった。もし金森コーチの右腰の前で打つ特訓を受けていなければ、この4選手が今なお元気にプレーしていたり、メジャーで活躍することもひょっとしたらなかったかもしれない。だがこの特訓は本当に苦しい。ホークスでは当初10数名が金森道場の門をくぐったのだが、開幕後、最後まで残ったのは井口選手と城島選手の2人のみだったと言う。さらに言えば、2003年に金森道場の特訓に耐え抜いた2人だけが、今なお主戦選手として活躍している。そしてそれは和田選手とカブレラ選手にも同じことが言える。金森コーチが西武を退団する際、カブレラ選手が大いに反対した話はあまりに有名だ。

筆者は、中島選手にこそ右腰の前で打つ特訓をしてもらいたい。しかも中島選手の場合、現状であっても右方向にホームランを打つ高い能力を持っている。もしこの特訓を行っていけば、その能力をさらに伸ばすことが可能なのだ。だが何度も言うようだが、この特訓は心身ともに厳しいものだ。まず打球が思うように前へ飛ばない状態が数ヵ月続くこと自体、大きなストレスとなる。だがそれを乗り越えれば中島選手はメジャーでも通用する一流のバッターになれると筆者は確信している。

中島選手が今後、もし本当にメジャー移籍をしてしまうことになるのなら、ファンとしては非常に寂しいことだ。だが反面応援もしたい。どうせメジャーに移籍をするのなら、メジャーリーガーたちをあっと言わせるような活躍をしてもらいたい。だが今のままではそれは難しいだろう。だからこそ金森式の特訓を行い、中島選手にはさらに上の選手に進化して行ってもらいたい。今季は現実的に考えると、3割30本30盗塁という数字は厳しいだろう。だがメジャー挑戦をする前に、中島選手にはぜひこの数字、トリプルスリーを達成してもらいたい!そして有無を言わせぬ実績を残し、胸を張ってメジャーに挑戦してもらいたい!いや、ファンとしては生涯ライオンズでプレーをしてくれることを期待したいところだが、今回はその気持ちを押し殺し、記事を締めくくりたいと思う。

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2010年08月12日 02:32 


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