
2010/08/17 西武vsソフトバンク 19回戦(許)

| 3:46 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
| ソフトバンク | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 | 0 | 5 | 12 | 0 | |
| 埼玉西武 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 8 | 0 |
埼玉西武vs福岡ソフトバンク19回戦(西武ドーム:20,808人)
埼玉西武ライオンズ 12勝7敗0分
継投:許銘傑~H岡本篤志~土肥義弘~●小野寺力~シコースキー
敗戦投手:小野寺力 1勝2敗 4.50
【ハイライト】
【ゲームレビュー】
台湾出身投手の対決は、実に19年振りのことだったようだ。19年前は西武の郭泰源投手と、ロッテの荘投手が投げ合った。そして時を経て19年振りの台湾対決を演じたのは西武許銘傑投手と、ソフトバンク陽投手だった。実はこの2人、台湾代表でチームメイトだったこともあるらしい。だが実績、経験から言えば許投手の方が遥かに上だ。許投手としては、先輩として不様なピッチングが許されるマウンドではなかった。
その意地もあってか、許投手は粘り強い良いピッチングを見せてくれた。終わってみれば6回を2失点に抑え、先発としての役割は十分に果たしたと言えるだろう。全体的にコントロールはいまひとつ定まらなかったが、それでもボールそのものには切れがあった。ストレートにも力があるように見えたし、小さく動かす変化球も効果的だった。本当ならば勝ち星を付けてあげたいところではあったが、それは叶わなかった。
打つ方では栗山巧選手が元気だ。一時は.270台を切るかとも思われた打率が、今夜の試合が終わった段階では4打数2安打で.299にまで上がって来ている。片岡・栗山の1・2番コンビの調子がこれだけ上がってくれば、その後には3割バッターが2人控えている。中島選手・フェルナンデス選手の前にランナーを出すことができれば得点力は自ずと上がり、先取点を取れる試合も増えてくる。野球は何と言っても先攻逃げ切りが重要なスポーツだ。先取点を挙げることができれば、6~7割という高い確率で勝つことができる。
今夜の試合に関して言えば、1点を先制されたものの、すぐに4-1と試合をひっくり返した。首位にあるチームたるもの、4-1から逆転負けをしてはいけない。だが9連勝のかかったこの試合、4-3という点差から小野寺力投手が同点・逆転を許してしまった。
結果を述べると、まずコントロールが定まっていなかった。「だいたいこの辺に投げれば抑えられる」という配球に対し、そのゾーンに投げ切れていない。あまり投げる機会のない不慣れなマウンドなら仕方ない面もある。しかし舞台はホームの西武ドームだ。これまで小野寺投手が数え切れないほど登ってきたマウンドだ。川崎選手に許したヒットに関して言えば、首位打者争いに加わる打者に投げるべくボールではなかった。甘い内寄りのストレート。ホームランにならなくて良かった、というのが筆者の正直な感想だった。
小野寺投手とホークスの馬原投手は、タイプとしたら同じ部類に入るだろう。ストレートとフォークを武器にするリリーバー。だがその実績を見ると2人の間には大きな隔たりがある。球種の数から言えば馬原投手の方が充実している。馬原投手はフォーク(スプリッター)だけではなく、カッターやチェンジアップ、カーブにスライダーと様々球種を投げることができる。だが小野寺投手の場合は本当に使える変化球と言えばフォークボールしかないというのが現状だ。一時はスライダーを投げていたこともあったが、1軍で通用するレベルまでには至らなかった。
さらに2人の数字の違いを見ていくと、馬原投手はこの試合までの通算セーブが153を数え、昨年までの通算防御率は2.82(今季は0.99)だ。この実績に対する年俸は1億4000万円まで増えてきている。一方の小野寺投手は通算セーブが59で、昨年までの通算防御率は3.98(今季は4.50)となっている。年俸は馬原投手よりも1億円少ない4100万円だ。
年齢は小野寺投手が上の1歳差なのだが、なぜここまで野球に差が出てしまったのだろうか。今夜の2人を観ていて筆者が思い出したのは、合気道の師範・藤平光一(とうへいこういち)氏の言葉だ。「理詰めで鍛錬し、無で戦う」。これができているのが馬原投手であり、できていないのが小野寺投手ではなかったろうか。2人とも練習に関しては間違いなく理詰めで、根拠のあるトレーニングを行っていると思う。だが試合に関して言えば、小野寺投手は無になれていない。マウンド上で色々なことを考えてしまっているように筆者には見えるのだ。
ピッチャーは、マウンドに登ったらボールを正確な場所に投げることだけに集中しなければならない。抑えた、打たれたというのは結果論でしかないわけだ。小野寺投手の場合、その結果論を先に考えてしまうために、思うような投球ができずにいるのではないだろうか。さらに言えば、小野寺投手は自分で自分を苦しめているように感じることが多々ある。実際にどうかは分からない。あくまでも筆者の考えなのだが、馬原投手は「あの辺に投げておけば打たれない」と考えているのに対し、小野寺投手は「あそこに投げなければ打たれる」と考えながら投げているように感じることがある。2人の能力が例えばまったく同じであっても、この考え方の違いにより、結果は大きく変わってしまうだろう。当然後者の方が視野が狭くなり、ピッチングが苦しくなる。
小野寺投手を復調させるためには、マウンドで考えさせないことが重要だと筆者は考えている。例えば2006年に好成績を挙げた時は、絶対的守護神であった豊田清投手がFAで巨人に移籍してしまい、考えている暇もなく連日マウンドに登らなければならなかった。だからこそ29セーブを挙げ、防御率も2.82と本来の実力を存分に発揮することができた。
筆者の予想では、近々中村剛也選手が1軍復帰し、ブラウン選手を抹消するのではないかと考えている。そうすれば上がってくるのはグラマン投手だ。グラマン投手が上がってくれば8回・9回が磐石のものとなる。そうすれば小野寺投手がファーム落ちする可能性も低くはないだろう。だがそれでも良いと思う。とにかくファームで全試合に投げさせてみてはどうだろうか。毎日毎日試合が行われる度、考える暇を与えることなく投げさせ続けるのだ。そうすれば藤平氏の言う無を得ることができ、2006年の心理状態を取り戻すことも期待できる。
だがもしこのまま1軍で、これまでのような起用法が続けば、小野寺投手の不安定さが改善されることはないだろう。ファームに落としても、状況によっての起用法には意味はないと思う。とにかくどんな状況であるにせよ、毎日マウンドに登らせることだ。1軍でこれができればベストかもしれないが、そうも行かない。それならばファームで毎日投げさせるのが改善策になるような気がする。もちろん必ずしも1軍登録を抹消させる必要はない。西武ドームと第二球場で1・2軍が試合をする日は、昼間はファームの試合で投げさせ、夜は1軍で投げさせるくらいの荒治療をしても良いだろう。小野寺投手はそれくらいの切っ掛けを与えなければ、この先何年も同じ状態を続けてしまう可能性も否定できない。それこそトレード要員になる可能性だってあるだろう。
だがファンがそれを望むはずはない。ファンが望むのは、リードした9回のマウンドに小野寺投手が君臨している未来だ。そうなるためにも、今は形振り構っている場合ではない。馬原投手を参考にするくらいの決死の覚悟が必要だろう。なぜ馬原投手は抑えられて、自分は抑えられないのか。その違いを自分の中で明確にし、足りないものを少しずつ補っていけば良いと思う。とにかくこのままではダメだ。小野寺投手には今、野球人生を大きく揺さ振るほど大きな切っ掛けが必要だ。技術以外の部分で何かを大きく変えなければ、小野寺投手が本当の意味で復活することはないような気がしてならない。だがそんな悲しい未来に、我々ファンは目を向けたくはない。小野寺投手には大勢のファンのその願いを背負い、明日もマウンドに登ってもらいたいと切に願う。


2010年08月18日 02:07 Tweet


