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新たな4番を育てようとする西武、その現状を見る


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野村克也前楽天監督は「エースと4番は育てられない」という言葉を残しているが、筆者もまさにその通りだと考えている。渡辺監督の言うように、地位が人を育てることもまた事実だ。しかしことエースと4番に関しては、それは非常に難しいことだと言える。なぜならエースと4番というのは、グラウンドに立っているだけでチームに大きな影響を与えられなければならないからだ。エースがマウンドに立っているのだから負けられない。4番が打ったのだから負けられない。チーム全員の気持ちをそういう方向へ持っていけるからこそ、それがエースと4番たる所以なのだ。

ライオンズは後半戦、4番抜きでの戦いが強いられている。中村剛也選手が右肘遊離軟骨の除去手術で、2~3ヵ月の離脱が決まった。交流戦中は中村選手の穴を、栗山巧選手大島裕行選手が4番に座って埋めて来た。しかし結果だけを見ると、中村選手のいた大きな穴を埋めきることはできなかった。

交流戦明けのホークス戦から、渡辺監督は4番を育てると明言している。もちろんそうせざるを得ない状況であるための措置ではあるが、決して簡単なことではないだろう。じっくりと4番として育てると言っているため、少し結果が出なかったからと言って簡単に4番を置き換えるようなことはしないと思う。となると気になるのは、誰を4番に据えるかということだ。候補を挙げるとすれば中島裕之選手高山久選手後藤武敏選手あたりだろうか。しかし後藤選手に関してはファームでの試合にも出場していないため、現在はひょっとしたら腰痛の治療に当たっているのかもしれない。詳細は分からないが、試合に出ていないということは、その時点で候補からは外れるだろう。だが筆者は後藤選手はライオンズでは最も4番に向いている選手だと考えている。

続いて中島選手だが、周りはやはり首位打者を獲らせてあげたいと考えていると思う。となると長打が求められる4番に座らせるよりは、ヒット狙いで良い3番の方が中島選手らしさは出せるだろう。だが首位打者にこだわらないというのであれば、中島選手を4番に据えても良いと思う。ただしその場合はホームラン30本以上が求められるため、打率は3割前後となるだろう。また、30盗塁という数字も難しくなると思う。

最後に高山久選手だが、正直筆者にはまだ高山選手がどういう選手なのかが分からない。ヒット一本で球場の空気を変えられるだけのバッターなのかどうか、判断しがたいところだ。しかし4番を育てるという発想なのであれば、まだ年齢的にも伸び白のある高山選手を育てることも悪くないとは思う。

渡辺監督は4番を育てると明言したが、しかし筆者にはある不安点がある。それは、ライオンズの1軍には4番の重圧を知る人間が1人もいなくなってしまったということだ。デーブ大久保コーチは2軍担当であるし、江藤智選手は昨年引退し、今季は巨人軍で育成コーチを努めている。そして長年ヘッドコーチを務めた土井正博コーチは2007年限りでユニフォームを脱いでしまっている。このような状況でどのようにして4番を育てるのか、筆者には心配でならない。

渡辺監督がもし本気で新たな4番を育てようとしているのなら、やはり4番の重圧を知り、数多くの4番打者を知るデーブ大久保コーチを1軍に戻すべきだろう。そしてできることならば、熊澤とおるコーチも同時に1軍に打撃コーチとして戻すべきだと思う。このコンビには打線の意識を徹底させるコーチング技術がある。分かりやすく言えば、来たボールをただ打たせるのではなく、明確な意思でもってバットを振らせることができるコーチなのである。例えば数多く存在するケースバッティングもその内だ。状況によっては長打など必要のないことがある。だがそれでも昨年以降のライオンズの打者の中には、状況を踏まえず大振りして凡打になる選手が存在している。

個性豊かな9人の打者を繋げ、打線にするためには、ケースバッティングを省略することはできない。ケースバッティングがあるからこそ、9つの点が打線として機能するのだ。森打撃コーチの下では、そのケースバッティングが徹底されていない。草野球チームですら、強いチームはケースバッティングを徹底させている。つまりチームを強くするためにはプロ・アマなど一切関係なく、どれだけ当たり前に基本プレーができるかということになる。

ライオンズはこれから新たな4番を育てようと試みているが、このままでは本当の意味での4番を育てることはまず不可能だろう。4番の重圧、4番の意味を知る人間が1軍に存在しないのだから、単純に考えて4番を育てられるはずがない。4番を育てられるとしたら方法は1つだけ。4番を知る人間を連れてくることだ。

なぜ4番タイプではない中村選手が4番に育つことができたのか?それは江藤選手が付きっ切りで4番の帝王学を中村選手に叩き込んだためだ。ベテラン選手は基本免除されているアーリーワークにも江藤選手は休まず参加し、中村選手に付きっ切りで4番のイロハを教え込んだと言う。だからこそ中村選手は4番になることができたのだ。

育てながら勝つことほど、野球で難しいことはない。しかも渡辺監督はそれを1軍でやろうとしている。相当な覚悟を持っているのだろう。だがそれほどの覚悟が本当にあるのならば、やはり自身の進退を賭す覚悟をしてでも盟友であるデーブコーチを1軍に戻すべきだろう。もしそうしなければ、失敗した時に大きな後悔を生むことになるはずだ。4番を育てること自体には筆者はファンとして決して反対はしない。だがやるのであれば、絶対に悔いを残さない最善の方法を取ってもらいたいと切に願うばかりだ。

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2010年06月16日 23:22 


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