
2010/04/30 日本ハムvs西武 7回戦

| 3:23 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | R | H | E | |
| 埼玉西武 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 0 | |
| 日本ハム | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1× | 3 | 11 | 0 |
北海道日本ハムvs埼玉西武7回戦(札幌ドーム:22,357人)
埼玉西武ライオンズ 4勝3敗0分
継投:涌井秀章~●藤田太陽
敗戦投手:藤田太陽 1勝1敗 0.66
ホームラン:中島裕之(4号ソロ)
【ゲームレビュー】
今季のライオンズはエースで勢いを得ることができない。本来であれば前日の試合、田中投手で敗れたことでこの試合は絶対に勝たなければならない試合だった。エースが登板するという状況で、決して連敗が許される場面ではなかった。だが結果としてはエース涌井秀章投手が粘投しながらも、打線は散発の5安打で2点を奪うのがやっと。そしてここまで13試合連続無失点ピッチングを続けていた藤田太陽投手が今季初失点し、敵地札幌でまさかのサヨナラ負けを喫してしまった。
サヨナラ負けを喫したとは言え、涌井・藤田両投手はよく頑張ったと思う。この敗戦はベンチワークによる敗戦だった。10回、藤田投手は1アウト後にヒットを打たれ、そのランナーを送りバントで進められた。ここでベンチが取った作戦は1番左打者の田中選手の敬遠策。ベンチはセオリー通り、右対右という状況を選び、2番森本選手との勝負を選んだ。しかし結果、森本選手にもセンター前に運ばれてしまい、敬遠策は失敗に終わった。
続く打者は左の糸井選手だったわけだが、セオリーを重んじて田中選手を敬遠したのであればこの場面、糸井選手に対し左投手の星野智樹投手を当てるべきだったと筆者は考えている。もちろん投手対打者の個別対戦データの相性もあるのだろうが、しかしセオリー重視から一転、セオリー無視の作戦に切り替えたのには、少なくとも筆者は共感することができなかった。
さて、この試合ではエラーは出なかったのだが、やはり筆者は中島・中村両選手の守備が気になっている。もちろん2人とも近年、非常に守備は上達しているのだが、しかし原・浅村両選手のように、本当の意味で守備が上手い選手と見比べてしまうと、やはりまだまだ不安定さを感じてしまう。
中島・中村両選手と原・浅村両選手の最たる違いは体格にある。前者・後者の体格差が守備に影響しているのだろうと筆者は見ている。体格差とは、上半身の強さだ。中島・中村両選手は強靭な上半身を持ち合わせているため、ある意味脚運びを多少疎かにしても速い送球をファーストに投げることができる。しかし小柄だったり、まだまだ線の細い原・浅村両選手の場合は、しっかりと下半身でボールを運んでいかなければギリギリのプレーでファーストに強い送球を投げることができない。この下半身の使い方こそが、上手い野手とそうでない野手の違いだと言うことができる。
原選手にしろ、浅村選手にしろ、ステップが非常に軽やかでリズム感がある。そして何よりも、捕球位置から送球方向に対するステップの角度がとても安定している。ステップとは、捕球直後に右足を半歩後ろに引くのが1、左足を送球方向に入れるのが2、スローイングが3。この1・2・3のリズム感が良ければ良いほど、送球を受ける野手はキャッチしやすくなる。原選手と浅村選手はこの1・2・3のリズム感が良く、しかもステップそのものが送球方向に対して正確なため、捕球後の動きに安定感がある。捕球後の動きに安定感があるということは、当然送球も安定してくることになる。
しかし中島・中村選手のように、上体の力のみでも強いボールを投げられる選手の場合、下半身をしっかりと運ばなくても投げられるということで、どうしても下半身への意識が薄くなってしまう。中島選手はここ1~2年でステップは非常に良くなってきたとは思うのだが、しかし中村選手のステップにはまだまだ明らかにリズム感が足りない。
中村選手の場合、もちろんサードというポジションの性質もあるのだが、それにしてもリズム感のあるステップを踏んでいるとは思えない。サード(とセカンド)というポジションはショートとは異なり、流れの中で送球をすることができない。捕球後に必ず一度止まる動作が入ってしまい、そこから方向転換をする形で送球方向にステップを踏んでいかなければならない。この一度止まる動作が入ってしまうことで、サードはリズムを取るのが難しくなってしまう。だがそれでも、日本ハムの小谷野選手のようにサードの守備がずば抜けて上手い三塁手も存在する。ロッテの今江選手も非常に上手い三塁手だとは思うが、しかし比べると小谷野選手に軍配は上がるだろう。西武ドームで日本ハム戦を観ていると、小谷野選手のサードでのリズム感の良さ、柔らかいハンドリング、ステップの正確さには惚れ惚れしてしまう。
小谷野選手のように本当に上手い三塁手がいるということは、やはりサードというポジションでもリズムを良くすることは可能だということになる。ということは中村選手の場合まだまだ練習が足りないのか、それとも練習方法がベストではないのか、または守備コーチが守備の面白さ、上達へのコツを伝え切れていないのかもしれない。
守備はノックを受けていれば誰でも上達すると思われがちだが、実はそんなことはない。例えば悪いステップのまま捕球練習を繰り返してしまうと、いくら捕球がずば抜けて上手くなったとしても、送球難を克服することはできない。そしてどうしてもステップが上手くできずに、外野にコンバートしていった名選手は多い。例えばカブスの福留選手、オリックスの田口選手などがそうだった。内野から外野にコンバートされる選手の特徴は、捕球は出来るのだが送球に難があるということ。そして送球に難がある選手のほぼ100%がステップに問題がある。福留選手も田口選手も確かそうだったと思うのだが、2人ともインステップ癖があった。インステップとは、前に出す左足を真っ直ぐ送球方向に向けることができず、右足側に角度が向いてしまうステップのことだ。インステップになってしまうとスローイングアームがどうしても遠回りしてしまい、より大きな慣性モーメントが発生してしまう。慣性モーメントが大きくなればそれだけ遠心力も大きくなるため、スローイングアームは余分な力まで使わなければ振り切ることができなくなってしまう。そして余分な力を発生させてしまうことでアームスウィングには大きなブレが生じてしまい、このブレが送球難を引き起こしてしまうのだ。
つまり送球難を克服するためには、1000本ノックでは意味がないのだ。1時間2時間特守を受けたところで、正確なステップを踏めていなければそれはただの「捕球練習」にしかならない。守備とは捕って投げるまでが守備だ。その過程を1から10まで丁寧に確認し、正しい動きで反復練習を繰り返していくことで、初めて守備は上達していく。
中島選手にしろ、中村選手にしろ、筆者に言わせればもっともっと守備は上手くなれる。あとは練習方法や、守備への意識だけだ。これらをもっともっと高い場所へコーチングで持って行ってあげられれば、2人の守備は劇的に向上するはずだ。そして中島・中村両選手と、原・浅村両選手の違いは10数年前の松井稼頭央選手と千葉ロッテ小坂誠選手の違いによく似ている。筋骨隆々で上半身だけでも強いボールが投げられた松井稼頭央選手と、小柄で全身をしっかり使わなければ速いボールが投げられなかった。小坂選手。
野球は体格が大きく影響するスポーツではあるが、しかし体格が恵まれたからこそできなくなることや、体格に恵まれなかったからこそできるようになることがある。もちろんそれらはひとえに意識の違いだけではあるが、だがその意識がとても重要なのだ。だからこそ中島・中村選手には今後名手に成長してもらうためにも、今このタイミングによる的確なコーチングが必要なのだ。本当にまだまだ上手くなれる2人だと思うので、今後さらなる守備での成長にも期待したいと思う。


2010年05月02日 08:46 Tweet


