
2010/04/20 ソフトバンクvs西武 4回戦

| 3:52 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
| 埼玉西武 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 1 | 8 | 15 | 1 | |
| ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 | 6 | 2 |
福岡ソフトバンクvs埼玉西武4回戦(ヤフードーム:23,134人)
埼玉西武ライオンズ 3勝1敗0分
継投:○岸孝之~H星野智樹~長田秀一郎~岡本洋介
勝利投手:岸孝之 4勝1敗 2.94
盗塁:片岡易之(12)
【ハイライト】
【ヒーローインタビュー】
【ゲームレビュー】
結論から言ってこの試合の岸孝之投手は、今季一番の投球内容だったと思う。7回に1失点していることから、完封した試合よりは結果的には劣るとも思えるが、しかし投球内容としてはこの試合が一番だった。岸投手にこれ以上のピッチングをしろと言っても難しいだろう。この試合の岸投手のボールは、それほど素晴らしいものだった。
試合をずっと見ていても、まったく打たれる気配がなかった。前半戦の岸投手のボールにはそれだけの力があり、マウンド上でも自信を持ってボールを投げているように見えた。球種的に言えば、ストレートとチェンジアップの出来が素晴らしく、この2つだけでも十分に組み立てができるほどだった。
ストレートが良かった要因は、並進運動のスムーズさと脊柱スピンの鋭さにあった。並進運動とは左脚を振り上げて投球方向側にステップすることで、重心を軸足(右脚)から前脚(左脚)に移動させる運動のこと。この動作がなければ、助走をつけてはいけないピッチャーは強いボールを投げることができない。そして脊柱回転とは、スピードボールを投げるのに最も重要な要素だ。スピードボールというのは、強い腕の振りで投げられるボールではない。球速を上げるためには腕の振りではなく、脊柱軸(背骨軸)のスピンを鋭くさせなければならない。この試合の岸投手は2つともベストの状態だった。
並進運動と脊柱のスピンを効果的に引き出すためには、脱力することが何よりも重要になる。どこを脱力するかと言うと、腕・肩だ。特にテイクバックからコッキングに移行する、投球肘と肩の高さが同じになる瞬間は、腕・肩は完全脱力している必要がある。これをサイレント・ピリオドと言う。筋肉というのは、完全に脱力した瞬間の直後に、最大のパワーを発揮することができる。
このサイレント・ピリオド後、脚~骨盤~胸郭~肩~腕の順番で骨盤主導でアームスウィングをすることにより、スピードボールを投げることができる。これがもし逆に、肩・腕主導(先行)でボールを投げようとすると、ボールの初速と終速には大きな差が生じ、いわゆるお辞儀をしたボールになってしまう。
この試合の岸投手のボールは、100球を超えてもまだまだ力があり、ボールがお辞儀をすることもなかった。ただこれだけのボールを投げられたことが岸投手自身になかったということもあり、このベストな状態に対するスタミナが足りなかった。そのため7回には追い込んでからバッターを仕留めきれず、10球以上粘られた末に松田選手にタイムリーヒットを打たれている。そしてこの時の岸投手はゾーンも狭くなっていた。追い込んだあとはストライクゾーンに投げる必要はなかったのだが、スタミナ切れを実感していたのだろう。その日一番良かったストレートとチェンジアップだけを、焦ってストライクゾーン内に投げ続けてしまった。そのせいで松田選手・長谷川選手にかんたんにファールを打たれてしまい、なかなか仕留めることができなかった。
7回は細川捕手のサインに何度が首を振っているのだが、首を振って投げたのはストレートとチェンジアップのみ。もし1球でも低めのボールゾーンに宝刀カーブを投げることができていれば、松田選手にタイムリーを打たれることはなかったかもしれない。7回の岸投手は、それほどストレートとチェンジアップにこだわっていた。
ピッチャーは、ピンチになるとなぜかスローボールを投げるのが恐くなってしまう。どんなピッチャーでもそれは同じだ。そしてなぜ恐くなるかと言うと、ストレートのタイミングでスローカーブを打つと、打球が簡単に100m近く伸びてしまうためだ。カーブという球種は、打者に待たせることで威力を発揮する。逆に打者に迎え打たれてしまうと、打球はまるでピンポン球のように飛んでいってしまう。
つまりチャンスになり、打つ気満々のバッターはじっくりボールを見ていこうという感覚にはならない。そのためタイミングがずれたカーブでも、カーブが曲がり切る前に打ちに来る。ピッチャーとしてはこれが一番嫌なのだ。逆にボールをじっくり待つ打者が相手の場合は、カーブが曲がり終わるまでじっくりと見てくれるため、遅球としての効果が最大限に現われる。これが、ピンチになるとピッチャーが遅球を使えなくなる真理だ。3月22日に岸投手は打ち込まれてしまったが、この時はカーブの曲がりっ鼻を狙われていた。
もし読者の中に野球をされている方がいれば、スローカーブは待たない方がいい。スローカーブは曲がり切り前に打ってしまうことで、ピッチャーに嫌な印象を残すことができる。結果的にアウトになったとしても、カーブの曲がりっ鼻を狙ってくるバッターに対しカーブを投げ切れるピッチャーは少ない。次の打席ではカーブの割合がグッと下がるはずだ。そうすればストレート系に的を絞って打っていけるため、バッティングも楽になる。
さて、この試合の岸投手は本当に素晴らしかったわけだが、もし27日の登板で完封、もしくは完投勝利を挙げることができれば、月間MVPの最有力選手になることは間違いない。なかなかないチャンスなだけに、ぜひ2008年8月以来となる月間MVPを狙ってもらいたいと思う!
【4月21日の予告先発投手:石井一久投手】


2010年04月21日 07:46 Tweet


