
2010/04/18 西武vs日本ハム 6回戦

| 2:28 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
| 日本ハム | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | |
| 埼玉西武 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | × | 3 | 6 | 1 |
埼玉西武vs北海道日本ハム6回戦(西武ドーム:24,432人)
埼玉西武ライオンズ 4勝2敗0分
継投:○帆足和幸~Sシコースキー
勝利投手:帆足和幸 2勝2敗 1.57
セーブ:シコースキー 2敗8S 1.74
ホームラン:中村剛也(5号ソロ)
【ハイライト】
【ヒーローインタビュー】
【勝利監督インタビュー】
【ゲームレビュー】
前回の登板では首を寝違えて不甲斐ない投球をしてしまった帆足和幸投手だが、この試合では再び素晴らしいピッチングを披露してくれた。8回を投げて5安打無失点と、これ以上ないと言えるほど素晴らしい投球だった。今季、これだけ素晴らしい投球を続けられている秘訣は、帆足投手曰くナチュラルスライダーにあるらしい。筆者はこのボールを今までずっとカッターだと思っていたのだが、どうやらそうではなくナチュラルスライダーだったようだ。
ナチュラルシュートという言葉を聞いたことがある方は多いと思うが、ナチュラルスライダーという言葉は普通あまり耳馴染みはないと思う。ピッチャーのスローイングアーム(ボールを投げる腕)は、テイクバックのトップの位置を過ぎると多かれ少なかれインスパイラル(内旋)が引き起こされる。身体構造の理に適った投げ方をするとスパイラルインしながら、リリースするその瞬間だけ、指先がきれいにキャッチャー方向に正対する。だがリリースのタイミングが0.0数秒遅れると、正対した時の指先よりもインの状態になってしまい、その指先の角度(人差し指先行)のせいでボールはシュート回転してしまう。
逆にリリースのタイミングが0.0数秒早まってしまうと、今度は中指先行のリリースになってしまい、ボールはスライダー回転してしまう。ナチュラルシュートとナチュラルスライダー、一般的にどちらが良いかと言うと、ナチュラルシュートだと言えるだろう。よくシュート回転したボールは良くないと言われるが、筆者はそんなことはないと考えている。コントロールを間違えばシュートもスライダーもストレートも、どれもかんたんに打たれてしまう。ということは、シュート回転していることを把握した上で投げるのであれば、ナチュラルシュートは決して悪いボールではないのだ。
そしてナチュラルスライダーよりもナチュラルシュートの方が良いと言う理由は、ボールの引っかかりにある。ストレートの握りで投げるナチュラルスライダーは、ボールが高めに抜けてしまう危険性が高いため、長打を浴びることが多くなる。一方ナチュラルシュートはどちらかと言うと引っかかり気味にリリースされるため、ボールは対角線の低めに外れることが多くなる。右投手の場合なら左打席側の低め、左投手なら右打席側の低めだ。このような理由から、どちらかと言えばナチュラルシュートの方がボールとしての危険度は低いと言うことができる。
だが帆足投手が投げているのはナチュラルスライダーだ。常識で考えると危険度の高いボールとなる。だが帆足投手の場合はあえてこのボールを武器として考えているようだ。昨年までのこのボールは、右打者のインコースに対しては上手く決まっていた。だがアウトコースに投げようとすると、その精度は低く、高めに浮いてしまっていた。だが今季は右打者のアウトコースへの精度を高めることにも成功している。つまり明らかにボールゾーンに投げたストレートであっても、ナチュラルスライドしているためにバッターは簡単に見逃すことができなくなっているのだ。するとバッターは追い込まれると手を出さざるをえなくなり、結果それで引っ掛けて内野ゴロに打ち取られている。この試合も24アウトの内、14個を内野ゴロで取っている。
ピッチャーの基本はストレートだとよく言うものの、帆足投手の場合は純粋なストレートは投げていない。ナチュラルスライドしたストレートをカッターに見立てると、純粋なストレートの比率はほとんどゼロに近づく。これはある意味、ライオンズの中で最もメジャーに近いピッチングスタイルと言うことができるだろう。このスタイルであれば、帆足投手は今渡米してもメジャーで通用すると筆者は確信している。もちろん帆足投手にメジャー志向はないとは思うが。
さて、話は変わって今日は守備の話もしておきたいと思う。ライオンズは今チームリーダーである中島裕之選手を怪我で欠いている。チーム状況が良いということもあり、渡辺監督は大事を取って登録を抹消したが、打線を考えると難しい決断だったと思う。だがそのおかげで、中島選手以外のショートをじっくりと見られるようになった。これまではなかなか見られなかったことだけに、注目していると本当に面白い。
中島選手は近年、本当に守備が上手くなったと思う。だがそれでもプロレベルで考えると、ショートストッパーとしては決して巧い部類には入れない。球界の名ショートと言えば現役ではヤクルトの宮本選手、中日の井端選手、楽天の小坂選手らがいる。少し前をたどれば西武の奈良原選手、阪神の久慈選手らがいて、彼らはまさに巧いショートの代表的存在だった。そしてそんな彼らと比べてしまうと、中島選手の守備はまだまだ硬いし、安定感にも欠いてしまう。
だが今中島選手の代わりにショートに入っている原拓也選手や浅村栄斗選手は本当に巧い。もちろん名ショートたちと比べるとまだ若さがあるが、しかし彼らと比べても遜色がないほどの巧さを持ち合わせている。具体的に中島選手とどこが違うかと言うと、ボールへの入り方だ。中島選手がボールを迎えに行っているのに対し、原・浅村両選手はボールを迎え入れられている。例えれば、凄い勢いで飛んできた生卵を割らずに捕球できる技術を持っているのだ。
さらにはもう一点、ダブルプレー時だ。中島選手はダブルプレーで一塁に送球する際、身体が外野側に流れてしまう癖がある。これはショートストッパーとしては致命的な悪癖となる。「中島裕之選手が名ショートと呼ばれるためには」でも書いたことなのだが、このことはランナーも理解しているため、中島選手に対してはどんどん激しいチャージをかけてくる。なぜなら、中島選手に外野側に流れる癖があるため、ベースに対し真っ直ぐスライディングして行っても中島選手の方が勝手に避けてくれるためだ。これによりランナーが安心して激しいチャージをかけてくれば、中島選手はさらに避けなければならない状況に陥る。するとランナーはもっとチャージをかけてくる。中島選手は今、この悪いスパイラルに入り込んでしまっている。
だが原・浅村両選手にはこの弱点がない。2人ともダブルプレー時、二塁・一塁を結んだ線上でしっかり送球ができている。そのためランナーは送球に当たらないように気をつけなければならず、激しいチャージをかけることはできなくなる。するとショートは安心して送球できるようになり、ダブルプレーの精度はさらに高まる。
この差が、アマチュア時代からずっとショートを守っている原・浅村選手と、プロに入ってから初めてショートを守った中島選手の違いなのだ。ショートというポジションは、キャッチャーと同じくらい急造するのが不可能なポジションだ。
もしライオンズが黄金時代よろしく鉄壁の守備陣を形成したいのならば、やはり中島選手をサードにコンバートさせるのが理想と言えるだろう。かつて石毛宏典選手がショートからサードにコンバートしたように。そしてグラブのハンドリングの柔らかい中村剛也選手がファーストに回り、ショートには原・浅村両選手、セカンドは片岡易之選手。守備面から野球を考えれば、この布陣が最も勝利に近づくものだと筆者は考える。
中島選手をサードにコンバートさせれば、そのメリットは守備だけには留まらない。守備に対する負担が減ることで、打撃にもプラスの影響が出るはずだ。ショートからサードにコンバートした名手、ヤクルトの宮本選手はこう言っている。「こんなに楽なんだから、サードを守る選手は打てなければ」と。
野球というスポーツは、点取りゲームではない。いかにして点を与えないかということが最も重要なスポーツだ。打てなくても試合に勝つことはできるが、守れなければ試合に勝つことはできない。それが野球なのだ。
先頭バッターがフォアボールや相手のエラーで出塁し、すぐさま盗塁をして、次のバッターがバントで送れば、内野ゴロで1点取ることができる。ノーヒットでも点を取ることが可能なのだ。だが反対にアウトにできるはずの内野ゴロをセーフにしてしまうと、勝てる試合も勝てなくなってしまう。野球とはそういうスポーツなのだ。
もし渡辺監督が本気で1点差で勝てる野球を目指すのであれば、将来的に見ても中島選手のコンバートは本人にとっても、チームにとっても間違いなくプラスに働くだろう。こうして考えて行くと、ひょっとしたら近い将来、渡辺監督が英断を下す日がやって来るかもしれない。


2010年04月20日 01:02 Tweet


