
理学療法士が西武の躍進を支えるかもしれない

埼玉西武ライオンズが今年、確かな優勝を手にするためにはどうすれば良いだろうか?その答えはどのチームであっても、どのスポーツチームであってもまったく同じことなのだが、とにかく故障者を出さないことだ。昨年はグラマン投手を筆頭に、細川捕手、松坂選手と故障者が絶えることがなかった。特にグラマン投手と細川捕手の離脱はチームの柱を大きく傾ける結果となってしまった。
野球チームではないのだが、怪我人を減らすことで躍進したプロスポーツチームがある。それはJリーグの清水エスパルスとジュビロ磐田だ。なぜこの2チームだけが劇的に故障者を減らすことができたのか。それは、メディカルチームを強化したことが要因だった。
野球チームにもサッカーチームにも、だいたいトレーナーやコンディショニングコーチと呼ばれるスタッフが在籍している。トレーナーというのはその名の通り、メインの仕事はトレーニングを教えることだ。例えば故障を防ぐためのトレーニングもトレーナーの担当となる。そしてコンディショニングコーチというのは、こちらもその名の通りで、選手のコンディションを整えるのが仕事だ。だがこの2役だけではどうしても手が足りなくなってしまうのが実情だ。特にプロ野球チームとなると1チームに60選手以上が在籍している。それを2~3人のコンディショニングコーチですべてを把握するには、現実問題として無理が生じる。
ではそんな中清水エスパルスとジュビロ磐田はどうしたのか?この2チームは、プロスポーツチームの中ではいち早く理学療法士を採用したチームで、理学療法士の活躍がチームの躍進を支えていた。特にエスパルスはその時期が最も早かった。
エスパルスとジュビロが数名の理学療法士と契約したのは96年のシーズンからだった。エスパルス、ジュビロともに95年まではナビスコカップで準優勝したことがあるくらいで、シーズンや他のカップ戦ではほとんど目立った戦績がなかった。それが理学療法士を起用し、怪我人が劇的に減った96年シーズン、エスパルスはナビスコカップで優勝を果たしている。ジュビロも翌97年にはJリーグ年間優勝を果たし、ナビスコカップでも優勝をしている。
エスパルスはその後も2002年まではずっと躍進を続け、ジュピロもその後5回の優勝を果たしている。その他カップ戦や前後期優勝を含めれば、得たカップ数はさらに5つ増える。
現在、埼玉西武ライオンズが理学療法士を起用しているのかどうかは筆者には分からない。だがここ数年の故障者の出方を見ていくと、メディカルチームが充実しているとは感じられない。
衝突や激突での怪我はどうしても防ぎようはない。赤田選手のようにフェンスに激突しての怪我などは、こればかりはメディカルチームの力ではどうしようもない。だがグラマン投手の左肩痛や、G.G.佐藤選手の足首痛、ジャンパー膝などは十分に防げる可能性はあったはずだ。
もしコンディショニングコーチや理学療法士が、最低でも2~3日に1回ROMテスト(関節可動域テスト)を行っていれば、グラマン投手に関しては関節包断裂という最悪の結果は防げたはずだ。関節包の断裂自体は一瞬にして起ることではあるが、その予兆は気をつけていれば見つけることができる。必ず関節可動域に不具合が見つかるものだ。
現在ライオンズには米田コーチ、南谷コーチという2人のコンディショニングコーチが在籍している。だが1軍・2軍と担当を振り分けたとしても1人30人以上を抱えることとなる。選手たちの練習スケジュールを考えていくと、毎日10人ずつ診ることも難しいのではないかと思う。となると、絶対的なスタッフ不足が長期に渡り影響を及ぼしていく。例えば早期に異常が見つかれば1週間で完治できる故障を抱えた選手がいたとする。だがそれを早期に見つけられなかったことで完治までに数ヵ月かけてしまう事態も出てくるだろう。
それを考えるとせめて1軍においてだけでも理学療法士の人数を増やすことを検討すべきだと筆者は考える。もし1軍全選手のコンディションを、毎日計測できるだけのメディカルチームが揃っていれば、故障者を劇的に減らすことが可能となる。現に日本で最も早く理学療法士を起用した清水エスパルスは、故障者数をJリーグで最も減らすことに成功している。そして高いコンディショニングを維持できることで、選手は常に自分たちのベストパフォーマンスを行うことができ、結果チームに優勝カップをもたらしている。
ライオンズには球界を代表するエースピッチャーや、12球団ナンバー1との呼び声も高い打線がある。だがもし今年も故障者に泣かされるようなことがあれば、優勝を目指すどころか、昨年のようにチームがまったく機能しなくなるだろう。
「無事是名馬」とは良く言ったもので、良い選手とはまず怪我をしない。ピッチャーならば隔年で肩・肘を痛め、隔年で20勝ずつ挙げるピッチャーよりも、怪我なくローテーションを守り、毎年10勝ずつ挙げるピッチャーの方が良い選手だと言える。そしてその良い選手のコンディションを支えているのがコンディショニングコーチであり、理学療法士ということになる。
涌井投手が20勝を目指すにも、中島選手がトリプルスリーを目指すにも、中村選手が50本塁打を目指すにも、まずは怪我をしないことが絶対条件となる。もし怪我をしてしまえば、目標に近づくことさえできなくなるだろう。そのためにもライオンズは昨年の反省を踏まえ、メディカルチームの更なる充実を図る必要があると筆者は考えている。


2010年03月02日 15:11 Tweet


