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菊池雄星投手がマスターすべき変化球


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今シーズンから2軍打撃コーチとして再びグラウンドに戻って来たデーブ大久保コーチは1月3日、西武園ゆうえんちで行われたトークショーで菊池雄星投手について話をしていたようだ。「カーブとフォークを覚えたら攻略が何十倍も難しくなる」と話していたようだが、まさにデーブコーチの言う通りだと思う。

雄星投手自身はスライダーの他に、チェンジアップやカーブ、フォークボールなども投げられるには投げられるらしい。ただ試合で使えるほどのクオリティはないようだ。だがもし筆者が仮にライオンズの投手コーチだったとしたらまず、カーブと2シーム、もしくはカットボールを教えるだろう。

デーブコーチの言う通り、フォークボールは大きな武器になる。だがフォークボールは投げられるだけでいいのだ。球数的には、全投球の3%以下になるのが望ましい。クローサーであればフォークボールの割合が30~40%になっても良いのだが、先発としてやっていくのならば、フォークボールの割合は通常は3%以下に抑えるべきだろう。

フォークボールやチェンジアップ(サークルチェンジなど)といった無回転系のボールは、肩や肘に大きな負担が掛かるのだ。特にフォークボールは肩後方にある筋肉を痛めやすい。そのため1試合に100球以上投げる先発タイプのピッチャーは、勝負どころ以外では使わない方が将来のためになる。それは身体のためだけではなく、駆け引き上手になるためにもだ。

もしどうしても縦の変化球を多投したいのならば、縦スライダーをマスターすれば良いと思う。縦スラは投げ方さえ覚えれば、簡単に投げられるようになる球種で、投げ方さえ間違わなければ肩・肘への負担は比較的少ない。そして先述したカットボールに関しても同じだ。雄星投手ほどの速いストレートがあれば、下手をしたらそのストレートとカットボールだけでもある程度試合を作れるようになるだろう。もしくは2シームでもいい。つまりムービングファストボールということだ。

雄星投手には年間30試合以上、200イニング以上、10完投以上するようなスケールの大きな先発ピッチャーになってもらいたい。そのためには現代野球の主流に流されてはいけない。フォークボールは確かに大きな武器となる。しかし先発ピッチャーである限りは、これをウィニングショットにすべきではないだろう。

そしてカーブに関しては、「岸カーブ」を習得してもらいたい。150km前後のストレートにスライダー、そして110km台のカーブがあれば、これだけでも3年は通用するだろう。

ピッチャーがボールを投げてホームベースまで届くまでの時間は、150kmのストレートと110kmのカーブでは0.2秒もの差がある。あまりピンと来る数字ではないかもしれないが、マウンドからホームベースまでの18.44mという距離を考えると、0.2秒の差は非常に大きい。ちなみに150kmのボールを打った時、バットとボールが接している時間は僅か1/1000秒でしかない。

日本のプロ野球の90%以上のバッターは、ストレートを待ちながら変化球に対応している。だがこの方法は、動きを止めたり減速したりする動きが苦手な人間の身体の性質を考えると、理に適ってはない。運動生理学を踏まえて考察していくと、変化球を待ちながら速いボールに対応した方が、身体はスムーズに反応してくれるのだ。しかし日本のプロ野球では、いや、アメリカでもそうなのだが、バッターはまずストレートにタイミングを合わせている。

ということは、ストレートを待っているバッターに対し、0.2秒遅く到達するスローカーブを投げれば、かなり高い確率でバッターを泳がせることができる。そして一度泳いでしまうと、バッターはその後なかなかタイミングを戻すことができなくなる。超一流のバッターは別として。

だからこそ筆者は雄星投手に、肩・肘に負担の少ない岸カーブをマスターしてもらいたいわけだ。現代野球では打撃練習の機材が大きく発展したが、反面ピッチャーの練習内容は半世紀前とほとんど変わらない。せいぜいコンディショニングという概念が加わった程度だ。そのため打高投低と言われて久しい。だがそれは練習内容云々以前に、ピッチングというものの根本を見落としているためだと筆者は考えている。そしてアマチュア選手をコーチする際も、よくそのことを話している。

バッターの仕事は、ピッチャーのボールにタイミングを合わせること。そしてピッチャーの仕事はその逆で、バッターのタイミングを狂わすことなのだ。つまりこれが打ち取るということに繋がる。ピッチャーは、打ち取ることを考えてバッターのタイミングを狂わそうとするのではなく、バッターのタイミングを狂わすことを考えて、その結果打ち取るのが理想なのだ。そしてそれを実践しているのが、岸孝之投手というわけだ。

岸投手は今後、星野伸之になれる可能性を秘めていると筆者は考えている。岸投手と星野投手の共通点は投球モーションが生理学的に理に適っているという点と、ストレートとカーブの球速差が30~40kmあるという点、そして何よりも体型だろう。

岸投手は180cmで68kgしかないが、星野投手もまた183cmで70kgしかなかった。いわゆる投手体型というやつだ。ピッチャー体型ではなく、投手体型。無駄な筋肉を持たず、身体をしなやかに使って快速球、もしくは快速球と感じさせるボールを投げ込むタイプだ。体型こそ違えど、工藤投手にも同じことが言えるだろう。

菊池雄星投手には、松坂大輔投手のようにではなく、岸投手のようになってもらいたい。筋力でパワーボールを投げようとするのではなく、関節を無駄なく使って質の良いボールを投げ続けてもらいたい。

例えばロジャー・クレメンス投手は全盛期、160km近いストレートを投げていた。しかし初速は160km近かったとしても、終速となると140km台まで落ちていることも多かった。初速だけとは言え160km近いボールを投げられれば、並のバッターではまず打てない。だが筆者の考えでは、クレメンスタイプに変わってしまった松坂投手よりも、星野タイプである岸投手の方がメジャーでは通用すると考えている。ただ星野投手自身はオリックス時代にアメリカにキャンプ留学した際、シートバッティングで滅多打ちにされてしまったが・・・。

とにかく言いたいことは、雄星投手にはただスピードを追い求めるのではなく、球質にこだわり続けた上で、スピードアップを図ってもらいたいのだ。勉強家でもある雄星投手ならあまり心配もいらないかもしれないが、万が一パワーピッチャーを目指してしまえば、雄星投手の本来の良さは消えてしまうだろう。

そしてパワーピッチャーになればなるほど、身体に負担の少ないボールが投げられなくなってしまう。岸カーブもその1つだ。腕に筋肉が付き過ぎてしまうと、どうしても中世に武器として使われた投石器のような真っ直ぐな腕の動きでしかボールを投げられなくなってしまう。そうすると肩は消耗品と化し、あらゆる個所が故障しやすくなってしまう。そしてこれこそ怪我が少なかった西口投手と、怪我の多い松坂投手の違いなのだ(西口投手の内転筋はクロスステップによることが原因)

少々話は長くなってしまったが、雄星投手が今後20年投げ続けるためには、フォークよりも岸カーブを習得すべきだと筆者は考えている。

ちなみにジャイロボールという選択肢もある。ファイターズのダルビッシュ投手やホークスの和田投手は自身のブログで、オーバースローでジャイロボールを投げるのは不可能だと断言していたが、筆者はそうは思っていない。確かにダルビッシュ投手や和田投手のオーバーハンドスローでは投げるのは不可能だが、ジャイロハンドスローによるオーバースローであれば、試合で通用するジャイロボールを投げることは十分に可能だ。現に筆者はあるアマ投手を個人指導し、オーバースローで140km前後のジャイロボールを投げさせることに成功している。

ジャイロボールに関してはまた別の記事で解説したいと思うが、雄星投手にはまだジャイロボールを投げられる可能性は残っているということだけは確かだ。

それにしてもまだプロで1球たりとも投げていないのに、雄星投手の注目度は本当に凄まじい。これが普通の高卒投手であれば、少なくとも1~2年は1軍に上がることもできないだろう。それが雄星投手の場合は、1年目からの活躍が期待されている。もちろん筆者も雄星投手には期待しているが、それはあくまでも2~3年後という感覚だ。連日の過熱報道が雄星投手のストレスにならなければいいのだが。

まずは1月7日に若獅子寮に入り、9日からじっくりと新人合同自主トレに取り組んで欲しい。そしてメディアにはくれぐれも練習の邪魔になるような行動だけは社会人として避けてもらえたらと思う。

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2010年01月05日 03:34 


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