
片岡選手への評価は「頑張っていない」だった

どうして西武の球団スタッフというのは選手に対してこうもデリカシーがないのだろうか。2006年には赤田選手との契約更改中に交渉担当が携帯電話を鳴らし、仕切り直された2度目の交渉の席でも同じ失態を演じた。
そして今年は片岡選手に対して「頑張っていない」という言葉を使ったらしい。前田康介球団本部長は守備・走塁面は評価しつつも打撃面、特に1番打者として「頑張っていない」と評したようだ。確かに片岡選手の打撃成績は去年と比べると低迷した。だがバッティングコーチのコーチング能力が下がった今季は、開幕前から打撃陣が苦しむことは想像に易かった。
中島選手に対しても書いたことなのだが、球団はWBC前にはWBCでの活躍も査定に含めると話していた。だが実際には中島選手にしろ、片岡選手にしろ、含まれているような金額には感じられない。
年俸が下がるのは仕方がないと思う。数字が下がれば年俸も下がるのは当然だ。だが下げるにしても下げ方というものがある。例えばこれが一般企業ならどうだろうか。給料を減らす相手に対し上司は「頑張っていなかったから」と言うだろうか?もちろん言う上司もいるだろうが、そういう上司が率いる現場のモチベーションは間違いなく低い。
前田本部長はどうして片岡選手に対し「頑張っていない」という言葉を使うことが出来たのだろうか?前田本部長は選手の気持ちは十分理解しているはずの人だ。なぜならロッテと太平洋クラブ(現西武)でプレーをしていたサウスポー投手だったのだから。自身が選手だったにも関わらず、どうして選手の気持ちを理解してあげられないのだろうか。
年俸がそれほど上がらないだろうということは、片岡選手本人が一番よく分かっていたはず。だからこそ片岡選手はその場でサインするつもりで、印鑑を持って交渉の席に着いていた。だがそこで言われた言葉が「頑張っていない」だった。
前田本部長は「年俸も高くなり、求めるものも大きくなった」と500万円アップという微増の説明をしているが、しかし片岡選手は金額に対し不満だったのではない。前田本部長の「頑張っていない」という言葉に対し怒りを露にしたのだ。これは当然の怒りだ。打撃成績は確かに下がってはいるが、しかし片岡選手は頑張っていなかったのだろうか?いや、100%そんなことはない。片岡選手は頑張っていた。と言うより、とてもよく頑張っていた。
もし今後もこのようなデリカシーのない交渉が続いたら、西武の選手の多くが代理人を立てるようになるだろう。そうすれば困るのは球団側だ。西武の交渉担当が弁護士よりも交渉能力に長けているとはとても思えない。
年俸を下げるにも下げ方というものがある。例えば「来年は1番打者としての巻き返しに期待している」とでも言えば、片岡選手は減俸だったとしてもサインしていただろう。「WBCの活躍は見事だったが、シーズン全体を通すとこうなった」とでも言えば、片岡選手もいくらかは納得できただろう。
選手は、球団の社員ではない。選手はあくまでも個人事業主扱いで、1年ごとに契約を更新する形だ。そのため選手はFA権を取得できると、自分を最も高く評価してくれる球団へと移籍して行く。万が一今回のように選手のモチベーションを下げるような交渉が今後も続けば、1~2年後のFA選手の引き留めは困難を極めるだろう。いくら成績が落ちたからと言って、主力選手に対し「頑張っていない」という言葉は、間違っても使ってはいけなかった。
せっかく球団改革が着々と進行して行っているのに、こんなところで仲違いをしていては元も子もない。球団・選手・ファンが三位一体とならなければ改革は進行しないのだ。それなのに最も信頼し合う必要のある球団と選手の間に溝が生まれてしまった。
片岡選手の次回の交渉は12月24日とのこと。クリスマスプレゼントとまでは行かなくても、せめて笑顔でサインできるだけの交渉になって欲しい。そうしなければ金額の問題以前に、片岡選手のモチベーションが上がらなくなってしまう恐れもある。一流選手だって人間には違いない。一生懸命頑張ったのにそれを「頑張っていない」と評価されたら、やる気を失ってしまうのが普通だ。だからこそ次回は、前田本部長は片岡選手を納得させるだけの交渉を行う必要がある。
金額以上に労いの言葉だと思う。心からのその言葉があれば、片岡選手もきっと金額には執拗にこだわることはしないはずだ。片岡選手が良い新年を迎えられるためにも、クリスマスイヴは良い交渉になることを祈りたいと思う。


2009年12月15日 06:35 Tweet


